S

色んな文章の倉庫です。

DEAR

遊んでいたかっただけだと思う

季節外れの蝉が鳴くから表面を撫でた

深すぎると濡れてしまうのは

多分僕のせいだから

 

寄生が上手だと

嫌味のような言葉が染みになる

景色の一つに過ぎないことが

どうしてこんなにも息苦しい

 

あなたに名前は要らなかった

たとえ患っていたとして

汚れていなかったのは君の方だから

 

甘すぎるザッハトルテ

吐き気が上る

「喜べなくてごめんね」なんて

そんなこと思ってもない癖に

 

きっと怖がっていた

きっと欲しがっていた

 

誰よりも輝きを愛していた

太陽の光に敵わないから

遮断しなければ生きていられなかった

 

穢れを喰わない宝石

汚れを生み出していることには気が付かない

 

鏡は黙ってこちらを見ている

無知は純潔だった

知ってしまった僕はこんなにも暗いのに

 

反射するものが目に眩しくて

痛みに耐えられないから石を投げた

 

「出来ないじゃ済まないんだよ」

粉々にすりつぶしてしまえばあるいは

泥は洗われたのかもしれないけれど

 

声も上げなかった

全部知っていたと思う

 

そんなに鋭い破片を持っているのに

あなたは煌めきで隠してしまうのだろう

反射に甘えてしまうのだろう

 

自覚しない鏡

破片にしたのは僕だった

 

「一人でだって生きていけるでしょう?」

 

突きつけたものが宝石だったとしても

飲み込んでいくばかりね

そろそろ喉につかえてしまう

 

もし僕が優しく成れていたら

僕も君も救われていただろうか

 

醜悪な美しさを

ちゃんと笑って慈しむ

悪者に成りたくない

 

ただ愛されていたかった

世界の中心はいつだって僕で

あなたもそうだと思いたい

 

すり減ったガラスで

それでも言葉だけを覚えている

 

勝手に誇って勝手に捨てて

ごめんなさいと謝りたい

それからやっぱり嫌いだと

あなたも僕も傷つけたい

 

赦されないのはどちらだろう

見たくなかったのは多分僕で

全部消えてしまえばいいなんて

夢から覚めるのは何度目か

 

世界が透明になった時

僕がきちんと終わらせたい

 

あなたは一体何を映すのだろう

まだ純潔を抱いたまま

独りぼっちで生きるのだろうか

 

煮詰まった気持ちがちょっと濃い

破片を心臓に突き刺したまま

あなたはザッハトルテを食べている

 

狡猾なまでに知らない白で

吐き出せないまま飢餓を待つ

 

僕はきっと